クリニックは、看護師の就業場所で病院に次いで多く、人気の職場です
仕事も楽そうなイメージがあり、病院からクリニックに転職を希望している看護師も多くいます
しかし、いざクリニックに就職しようと思ったときに、色々な悩みもでてきますよね
特に、出産で一度退職された方や常勤で働いていると縛られているようで嫌だと感じている方の多くの悩みがこちらです
- やっぱりパートの方が楽でいい?
- 給与の多い常勤がいい?
- 扶養は外れるべき?
特にブランクのあるママ看護師さんが復職にあたって一番悩むポイントではないでしょうか
私自身、独身の時は常勤
子供が小さい時は扶養内のパート
子供の手が離れたら扶養外のパート
とライフスタイルに合わせて雇用形態を変えていきました!
私は正看護師免許だけでなく、FP2級も取得しています
パート・常勤など雇用形態によってのメリットデメリット、社会保険や税金のことなど、私の体験をもとに解説していきます
※ここでは主に小規模クリニックでの話を想定しています。母体が病院などの規模が大きいクリニックでは当てはまらないことがあります
パートタイムと常勤の違い
ここではクリニック勤務でのパートタイムと常勤の違いを説明していきます
パートタイムとは
パートタイム労働法(「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)の対象である「短時間労働者(パートタイム労働者)」は、「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」とされています。
厚生労働省
つまり、勤務日数・勤務時間が常勤よりも少ない人です
パート勤務の場合、通常の労働条件や給与を受け取りますが、労働時間が短いために給与や福利厚生が常勤よりも少ないことがあります
扶養内パートとは
扶養内とは、大きく「社会保険上での扶養」と「税金上での扶養」に分かれます
税金上での扶養
「税金上での扶養」とは、いわゆる「103万の壁」といわれるものです
年収が103万円を超えると、税金(所得税)を払わないといけなくなります
住民税も103万円を超えると払わないといけないと思っている方が多くいらっしゃいますが、住民税は自治体によって課税される年収額が違います
<例> 級地区分別の個人住民税均等割の非課税限度額について(給与所得者(独身)の場合)
総務省
1級地:東京23区、指定都市(16/20)など 収入金額 100万円から課税
2級地:県庁所在市、一部の市町など 収入金額 96.5万円から課税
3級地:一般市・町村など 収入金額 93.0万円から課税
所得税だけでなく、住民税も抑えたいという方はお住いの自治体に住民税の課税収入金額をご確認することをお勧めします
もし、年収を103万円で抑えて働く場合、
年収103万÷12か月=85,833.333…
単純計算で月々約85,000円に抑える必要があります
看護師の時給は高めです
仮に時給1500円として計算していきます
クリニックの勤務では残業の有無にもよりますが、午前と午後の診察に分かれているため、1回の勤務時間(午前のみもしくは午後のみ)は4時間程度になります
仮に勤務を週3回行った場合
時給1500円×4時間×3日=18、000円
一週間の勤務時間は12時間で、収入は18,000円となります
こちらを1か月に換算すると勤務時間は48時間
月収は72、000円となります
上記のように、例えば時給1500円で3回出勤した場合、年収103万円に抑えて勤務をすることができます
※こちらの計算は単純な計算になりますので、実際には祝日などがあり勤務が減ったり、残業があったりで収入の増減があることを考慮し、参考程度にしてください
また、クリニックによっては、パートに対しても資格手当や皆勤手当ての支給があったり、ボーナス時に寸志をいただけるところもあります
クリニック看護師がパートで年収103万円に抑えるためには、勤務日数や勤務時間をかなり少なくする必要があることがわかります
社会保険上での扶養
「社会保険上での扶養」とは、いわゆる「130万円の壁」です
現在、ご家族などの被扶養者(ご家族の会社の社会保険に入っている)の場合、年収が130万円を超えると、ご家族の社会保険の扶養から外れることになります
そのため年収が130万円を超えると医療保険(社会保険や国民健康保険)に加入し保険料を自身で納めなくてはならなくなります
年収が131万円となった場合、社会保険料の支払いが加わるため、年収129万円と比べると手取りが減ることになります
フルタイムほどは働けないが、年収103万円では少ないという方は年収130万円に抑えて働かれる方が多いです
もし、年収130万円で抑えて働く場合
年収130万円÷12か月=108、333.333‥‥
単純計算で月々約108,000円に抑える必要があります
時給1500円と仮定して計算していきます
クリニックの勤務では残業の有無にもよりますが、午前と午後の診察に分かれているため、1回の勤務時間(午前のみもしくは午後のみ)は4時間程度になります
仮に勤務を週4回行った場合
時給1500円×4時間×4日=24,000円
一週間の勤務時間は16時間で、収入は24,000円となります
こちらを1か月に換算すると1か月の勤務時間は64時間
月収は96,000円となります
上記のように、例えば時給1500円で4回出勤した場合、年収130万円に抑えて勤務をすることができます
※こちらの計算は単純な計算になりますので、実際には祝日などがあり勤務が減ったり、残業があったりで収入の増減があることを考慮し、参考程度にしてください
クリニックによっては、パートに対しても資格手当や皆勤手当ての支給があったり、ボーナス時に寸志をいただけるところもありますので、そこも考慮して年収130万円に抑えて働く必要があります
クリニック看護師がパートで年収130万円に抑えるためには、勤務日数や勤務時間を少なくする必要があることがわかります
また、年収は130万円を超えてしまうと扶養を外れなくてはいけなくなります
そのため毎月の給与、年収をいつも気にしながら働く必要があります
フルタイムパートとは
フルタイムパートとは、通常のフルタイムの労働時間に近い時間を働きながら、正規の社員(常勤)ではなく、パートタイムとして雇用される労働形態のことです
扶養内のパートと違い、扶養を外れるため年収を抑える必要がなくなります
常勤と同じ程度の勤務時間ですが、月収ではなく時給になるため出勤時間・日数に応じた給与が支払われることになります
一般的に常勤と比べて、手当や賞与が少ないなど、福利厚生や昇給などの面で常勤と異なること多いです
しかし、常勤と比べて責任の範囲が軽くなることが多いため、扶養から抜けて非常勤としてフルタイムに近い時間・日数で働く看護師は多くいます
常勤とは
クリニックの常勤は正規雇用されて、所定の労働時間働いているということです
月給制のところが多く、給与はパートに比べて安定します
小規模のクリニックでは、休診日以外は出勤ということになります
例えば、水曜・土曜の午後と日曜日が休診日の場合は、そこが自身のお休みとなります
カレンダー通りに開院しているクリニックでは祝日もお休みとなります
常勤の場合は、そこそこのクリニックによって責任の範囲は変わっていきますが、パートよりも重くなります
クリニックでパートで働く
パートで働く上での注意点を見ていきましょう
パートのメリット・デメリット
パートのメリットはこちら
- 勤務時間・日数が少ない
- 精神的負担が少ない
- 仕事とプライベートが両立できる
- 疲れにくい(長時間勤務を避けることで、疲れにくくなり、仕事の効率が向上する)
パートだと、勤務の日数や時間が少ないことが多くのメリットを生んでいます
子供が小さい方や、ブランクのある看護師さんは、精神的な負担が少なくプライベートに時間を割くことが出来るので好まれる働き方になります
私は子供が幼児期に扶養内のパートで働いてました!
子どもの習い事や、学校行事なども調整しやすかったです。
朝はバタバタしましたが、昼には帰ってくるので、片付けは後回しにして出勤してました!
パートのデメリットはこちら
- 毎日出勤しないため、患者さんの把握がしにくい
- ルールが突然変わっていることがある
- 年収を抑えないといけない(扶養内の場合)
- キャリアの発展が遅れる
デメリットとしては、出勤していないときに起こった色々なことを把握することが難しいということです
例えば、今までトイレ掃除は事務さんがやっていたが、昨日から看護師がやることになった…などです
ちょっと細かい話の例えですが、小規模であるがゆえに少人数でルールを変えてしまえるので、知らないところで変わっていたということはよくあります
「聞いていなかった…」ということで他のスタッフとの雰囲気が悪くなると嫌ですよね
しかし、情報伝達をしっかりできているクリニックであれば、問題はありません
年収についても、経営者である院長が計算していることも多いですが、あまり考えずにお休みする方の交代要員をしていて11月ごろに「年収が越えてしまうかも…」とお休みを余儀なくされることもあります
11月ごろというと、インフルエンザのワクチン接種なども行っている時期でもあり、内科系のクリニックは忙しいことが多いです
そのため、他のスタッフに迷惑が掛かってしまうかもしれません
しっかり計画して年初から年収を抑えていけることが望ましいです
扶養内パートで働く注意点
扶養内のパートで働くときに特に注意したいのがパート看護師しかいないクリニックがあるということです
クリニックに常勤がいない場合、薬剤の在庫の管理や情報伝達などの全体的な管理をする人がいため、一人一人のパート看護師の責任が重くなります
そのため、自分が出勤しないときのことも考えていく必要があります
例えば、「翌日出勤ではないが、翌朝に急遽検査の予約が入ったから、検査の準備をし、翌日出勤の○○さんに一言連絡しておこう」など、他のスタッフの働きやすさを考えることが大切です
このように情報伝達を確実にする仕組みなどがある場合はパート看護師のみでもうまくいくことがあります。
常勤の看護師がいる場合は、常勤の看護師が全体的な管理を行っているため、パート看護師は責任は軽くなることが多いです
しかし、「常勤の看護師がいるからいいや」と考えず、常勤の看護師の手助けとなるよう働くことで看護師間の信頼関係につながります
扶養を外れて働く注意点
扶養を外れてパートで働く場合、年収を抑える必要がなくなります
出勤出来る日数・時間が増えるため収入が増加し、安定してきます
しかし扶養を外れてパートで働く時の注意点として、年収が130万円以上となる場合は自身が医療保険(社会保険や国民健康保険)に加入しなくてはいけません
クリニックによって、社会保険・厚生年金があるところもあれば、医師国保のみで年金は国民年金というところもあります
社会保険の場合は労使折半のため、自分の社会保険の支払いが給料が天引きされますが、クリニック側も半分支払ってくれるため、負担が少なく感じるでしょう
医師国保もしくは市町村の国民健康保険の場合は、クリニックの負担はなく全額支払いの必要があるため、保険料の支払いだけ考えると負担が多いと感じるかもしれません
社会保険料はなるべく少ない方がいいと思う方が多いと思いますが、医師国保を取り扱っているクリニックは多くあります
扶養内で入職する場合でも、いつか扶養を外れて働く場合も、加入する健康保険について調べておく必要があります
パート勤務に向いている人
パート勤務に向いている人はこんな方です
- 子育て中の看護師
- 本業が別にある看護師
- ブランクがある看護師
子育て中の看護師
子育て中の方は、子どもの世話など家庭においての役割を多くになっていますよね
クリニックで扶養内で働くのであれば、圧倒的に仕事の時間よりも多くの時間をプライベートに割くことができます
子供の授業参観や懇談会などの調整もしやすいでしょう
習い事や部活の送迎など、ママさんは大忙しです。
私はPTA役員なども扶養内で働きながらこなしていきました!
本業が別にある看護師
私が出会ったクリニック看護師さんで、午前のみクリニックで勤務して、午後は居酒屋を経営しているという方がいらっしゃいました
その方はもともと病棟看護師として働いていましたが、友人と居酒屋を開業するため看護師を退職しました
しかし、やはり看護師としても働きたいという思いもあり、クリニックで働くことを決めたそうです
クリニックのパート勤務だと、時間の余裕があるので本業にも支障がなく、看護師としてのやりがいも感じられているので充実していると話していました
ダブルワークの看護師さんは結構います。
私も以前、飲食店で働きながらクリニックで勤務していました!
ブランクがある看護師
看護師という仕事は、一度退職してしまうとなかなか戻りにくいという特徴があります
人の命を取り扱うため、責任が重く緊張感が常にあることが復職に対しての意欲を低下する要因の一つではないでしょうか
クリニックでの勤務では、重症・緊急性の高い患者さんは病院へ紹介することが多いです
そのため病院で働くよりもクリニックでの勤務の方が責任の負担が少ないと考えられます
実際にクリニックの方が精神的に負担が少なそうという理由で復帰されている看護師さんもいます
私の勤務先にもブランク15年の看護師さんがいらっしゃいます!
最初は緊張されていましたが、入職1か月後には慣れてきて即戦力です!
クリニックで常勤で働く
常勤で働く上での注意点を見ていきましょう
常勤で働くメリット・デメリット
常勤のメリットはこちら
- クリニック全体の把握が容易
- 月収制が多く、収入が安定する
- 休みが決まっているので予定がたてやすい
- 年末年始や夏休みが長い
毎日出勤する常勤は、よく来院される患者さんと顔なじみになるため、状態変化にも気づきやすく信頼関係もはやく築くことができます
患者さんとの関わりで、「ここにくるとあなたがいるから安心するわ」と言われたときは本当にうれしかったです。
多くのクリニックはカレンダー通りに日曜祝日を休診にしており、年末年始や夏休みも設定しているため、友人や家族との予定が決めやすいです
病院で煩わしかった委員会などもないため、お休みの日はしっかり自分のために過ごせます
常勤のデメリットはこちら
- 休診日が同じ他のクリニックに受診しにくい
- 休診日以外の休みを取りにくい
クリニックで常勤で働く看護師の悩みの多くが休みを取りにくいという点です
看護師の人材不足は病院でもクリニックでも同じようにあります
しかし、クリニックの方が圧倒的に看護師の人数が少ないためお休みを取るのに躊躇してしまうことが多いです
自分が病気になってしまった場合などのやむを得ない場合を除いては、予定を休診日に変えてなるべく仕事を休まないよう調整している看護師が多いです
常勤で働く注意点
クリニックで常勤で入職するときに一番注意したいところは社会保険についてです
「扶養を外れて働く注意点」でも少し触れましたが、クリニックによって社会保険・厚生年金を取り扱っているところと、医師国保を取り扱っているところがあります
これは求人票などで確認することができます
社会保険に加入する場合
社会保険に加入する場合は、労使折半のため、給料天引きもされますがクリニック側も半分支払ってもらえます
社会保険の場合は家族を扶養に入れる場合に支払いが個別に増えるわけではありません
しかし、国民健康保険の場合は、子どもであっても加入者全員に保険料の支払いが生じます
扶養する家族がいる場合は社会保険に加入できるクリニックに入職するほうが保険料の支払い金額を抑えることができます
医師国保や市町村の国民健康保険に加入する場合
医師国保の場合は、都道府県の医師会が運営している保険で都道府県ごとの「医師国保健康保険組合」の加入になります
そのため保険料は勤務先の地域によって変わってきます
医師国保は世帯での加入となります
家族に市町村の国民健康保険に加入している人がいる場合は注意が必要です
家族も医師国保に加入、もしくは医師国保に加入せず市町村の国民健康保険に加入しなくてはいけません
しかし、家族が会社などの社会保険に加入している場合は国民健康保険の適用除外となるため、家族が医師国保に加入する必要はありません
医師国保は保険料が一律のため、年収が多くなっても保険料が増えることはありません
しかし、市町村の国民健康保険は年収が増えるとともに保険料も増えていきます
年収が多い場合は医師国保の方が保険料を抑えることが出来ますが、年収が少ない場合は市町村の国民健康保険の方が保険料が安いです
社会保険料は年間の支払い合計金額が多いため、少しでも抑えたいと考える方は多いと思います
就職する際にはしっかり社会保険についても調べておきましょう
常勤に向いている人
常勤に向いている人はこんな方です
- 収入を安定させたい
- 責任をもって働きたい
- 仕事でやりがいを感じたい
パート勤務より常勤で働くことに向いている人は、収入を安定させたい人です
月収になるため時給制のパートより安定します
お正月休みや夏休みがあっても月収として決まった額が支払われます
また、パート勤務よりも責任は重くなりますが、実はそれがやりがいにつながります
きちんと責任もって働くことで、診療がスムーズになったり、パートさんが働きやすくなって感謝されたりすることもあります
まとめ
クリニック看護師のパート勤務と常勤の違いについて解説してきました
パート勤務の場合
- プライベートが充実する
- ブランクがある看護師や子育て中の看護師向き
- 扶養内の場合は年収を抑える必要がある
- 扶養を外れてパートとして働くこともできる
常勤の場合
- 収入が安定する
- やりがいを感じる
- クリニックによって医療保険の取り扱いが違う
- 休診日以外の休みがとりにくい
クリニックで働いて、プライベートも仕事も充実した人生にしましょう!